神戸地方裁判所洲本支部 昭和51年(ワ)3号 判決 1978年7月11日
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 原告
被告は原告に対し金一一八万二九五〇円及びこれに対する昭和五〇年八月一八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言
二 被告
主文同旨の判決
第二当事者の主張
(請求原因)
一 本件事故
1 日時 昭和五〇年八月一八日午後一一時五〇分ころ
2 場所 兵庫県三原郡三原町市善光寺二三二の二番地先道路
3 事故の状況
被告運転の普通乗用自動車(被告車)が原告運転の普通乗用自動車(原告車)に衝突した。
二 帰責事由
被告は、時速約六〇キロメートルで原告車を追い越すさい、
原告車の動静を注意すべき義務を怠つた過失により本件事故を発生せしめた。
三 損害
1 原告は、完治まで二〇日以上を要する頭部打撲傷を負つた。
(一) 治療費 一万円
福原医院
(二) 休業損害 六万九〇〇〇円
原告は、農業兼会社員として一日三四五〇円の収入を得ていたところ、本件事故により二〇日間の休業を余儀なくされ、六万九〇〇〇円の損害をこうむつた。
(三) 慰藉料 二〇万円
2 原告車は大破したため受けた損害 九〇万三九五〇円
よつて原告は被告に対し右損害金合計一一八万二九五〇円及びこれに対する本件事故の日から支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(請求原因に対する認否)
一 第一項は認める。
二 第二項は否認。
三 第三項は不知。
(抗弁)
一 本件事故は、原告の過失に基づくものである。すなわち、原告は、原告車を運転し、東側車線を南進中のところ被告車が進路前方において、追越しの直前やにわにセンターラインを越えて西側車線に進入してきたため、衝突を避けることができなかつたものである。
二 損害
1 傷害、顔面打撲傷等、昭和五〇年八月一八日から同年九月一五日まで通院
(一) 治療費 一万一五二一円
福原医院、村野診療所
(二) 休業損害 五万七五〇〇円
被告は、昭和五〇年八月一九日から同年九月一〇日まで二三日間休業のやむなきに至り、調理師として休業損害は五万七五〇〇〇円である。
(三) 慰藉料 二〇万円
(四) 物損(被告車が大破した損害) 九六万七七八〇円
三 被告は、昭和五一年三月二六日の本件口頭弁論期日において右損害金合計一二三万六八〇一円及びこれに対する本件事故の翌日である昭和五〇年八月一九日から当日まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金をもつて本訴債権と対当額において相殺する旨の意思表示をした。
(抗弁に対する認否)
第一、二項は否認する。
第三証拠関係〔略〕
理由
一 請求原因第一項は当事者間に争いがない。
二 被告の過失
成立に争いない甲第一ないし第七号証及び証人上川泰右、同太田健作、同岸本治、同森教宏の各証言、原告本人、被告本人各尋問の結果によれば、被告は、被告車を運転して時速約六〇キロメートルで本件道路を南進中、約一五〇メートル前方の右側歩道から前方車道上に出てくる原告車を発見したが、原告車が車道上を横断して南行車線に入り、道路左側端をゆつくり南進するのを約一〇〇メートル前方に見て同車がそのまま直進するものと感じ、同車の右側を追越そうとしてそのまま進行したところ、同車に対する動静注視を怠つた過失により約三〇メートルに接近した地点で同車が右折合図をし、右折しようとしたのを発見するのが遅れ、そのまま右折して来た原告車と衝突したものと認められる。右事実によれば、被告に追越のさいの前車に対する注意義務違反の過失が認められる。
三 損害
成立に争いない甲第八号証及び原告本人尋問の結果によれば、原告が本件事故のため頭部打撲傷の傷害を受け、約一か月間通院(一週一回薬をもらうため)治療をしたことが認められる。
1 治療費 一万円
原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一二号証及び同尋問の結果により認められる。
2 休業損害 六万九〇〇〇円
原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一三号証の一、二及び同尋問の結果によれば、原告は、淡路ダンボール株式会社に勤務していたところ本件事故のため、昭和五〇年八月一九日から同年九月七日まで二〇日間欠勤し、六万九〇〇〇円の給与の減額を受けて同額の損害をこうむつたことが認められる。
3 慰藉料 一五万円
原告の傷害による慰藉料は前記通院の状況から一五万円をもつて相当とする。
4 物損 五一万三八〇〇円
証人太田健作の証言により真正に成立したものと認められる甲第一五号証及び同証言によれば、本件事故により原告車は大破しその修理に五一万三八〇〇円を要すると認められる。
5 過失相殺
前記被告の過失と後記原告の過失を考量すると、原告の過失六割、被告の過失四割と認めるのが相当であり、それぞれ各損害額(慰藉料を除く)から減額する。
6 損害 合計 三八万七一二〇円
四 抗弁
1 原告の過失
成立に争いない甲第四ないし第七号証及び証人岸本治、同森教宏、同上川泰右の各証言、原告本人、被告本人各尋問の結果によれば、原告は、原告車を運転して本件道路外西側小駐車場から道路に出て、再び右道路外大駐車場に入るため、本件道路を西から東へ横断し、しばらく南へ直進したうえ右折するにあたり、折から後方約三〇メートルに接近して時速約六〇キロメートルで南へ直進してくる被告車があつたのに、後方確認不十分のまま漫然右折合図(車道進入のさい右折合図をしたが一たん切れていた。これは二度目の合図)をして右折進行した過失により被告車と衝突したこと、車両は、道路外に出るため右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、徐行しなければならないのに、原告車は、道路左側端からいきなり右折を開始した過失により被告車と衝突したことが認められる。右事実によれば、原告に、右折のさいの後方不確認、直進車の進路妨害の過失がある。
2 損害
被告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第一ないし第四号証によれば、被告は、本件事故のため顔面打撲傷の傷害を受け、昭和五〇年八月一九日から同年九月一五日まで通院加療(実治療日数八日)を受けたことが認められる。
(一) 治療費 一万一五二一円
右証拠によれば、被告は、福原医院に七八四〇円、村野診療所に三六八一円の治療費を支払つたことが認められる。
(二) 休業損害 五万七五〇〇円
被告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第五号証によれば、被告は、(有)馬里邑に調理師として勤務していたところ、本件事故のため、昭和五〇年八月一九日から同年九月一〇日まで二三日間欠勤したこと、事故前三か月間の平均月収は七万五〇〇〇円であつたことが認められる。以上の事実によれば、被告の休業損害は五万七五〇〇円となる。
(三) 慰藉料 一五万円
被告の本件事故による傷害に対する慰藉料は、前記傷害の程度に照らし一五万円をもつて相当と認める。
(四) 物損 五六万五〇二五円
被告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第七号証及び同尋問の結果によれば、本件事故のため被告車が大破し、その修理に五六万五〇二五円を要するものと認められる。
(五) 過失相殺
前記三5のとおり、過失相殺する。
(六) 損害合計 五三万〇四二七円
3 抗弁第三項は記録上明らかである。
五 以上の事実によれば、原告の被告に対する本件事故による損害賠償請求権は全部相殺により消滅したこととなるから、原告の本訴請求は理由がない。よつてこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 塩田武夫)